21世紀COEプログラム同位体が拓く未来−同位体科学の基盤から応用まで−
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基盤研究分野 同位体分離・創製部門


1.同位体分離に関する研究

1.1 クラウンエーテル固定化樹脂を用いた汎用同位体分離技術の確立

1.2 超臨界流体置換クロマトグラフィー同位体分離法の原理実証

1.3 環境学や歴史学への応用を考えた炭素同位体濃縮技術の確立

1.4 マイクロエマルションを利用した疎水性白金触媒の創製


2.同位体創製に関する研究

2.1 新しい同位体の創製

2.2 崩壊エネルギーの測定と半減期の決定

2.3 医療用放射性同位体製造法の検討

 


1.同位体分離に関する研究

1.1 クラウンエーテル固定化樹脂を用いた汎用同位体分離技術の確立


クラウンエーテルは環状化合物で,様々な環径をもつものを合成することができる.分離対象の同位体を含む化合物に対して,同位体分離能を発揮する環径のクラウンエーテルを選択適用することで,汎用の同位体分離技術を開発することが目標である.18-crown-6固定化樹脂を用いた置換クロマトグラフィーにより,窒素15の同位体分離に成功した.

カラムの温度を293 Kに保持し,アンモニウム塩メタノール溶液を用いて置換クロマトグラフィーを行った1(図1).15NH4イオンは樹脂相に濃縮される.

実験により得られた濃縮係数と,Gaussian03を用いた計算値とを比較した.計算によっても樹脂相に15Nが濃縮することを確認でき,また値の大きさも実験値と良く一致した(表1).

置換クロマトグラフィー窒素同位体分離実験装置
図1 置換クロマトグラフィー窒素同位体分離実験装置.


表1 濃縮係数の実験値と計算値
      ε(実験値) ε(計算値)
H.F.
3-21G
ε(計算値)
B3LYP
6-311G
NH4Cl 0.0021±0.0009 0.003 0.002
NH4Br 0.0030±0.0013 0.004 0.001
NH4I 0.0016±0.0004 0.003 0.002

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1.2 超臨界流体置換クロマトグラフィー同位体分離法の原理実証


超臨界二酸化炭素とLiClメタノール溶液の混合溶液を用いて,超臨界流体クロマトグラフィー法によりLi同位体分離を実現するための検討を行っている.超臨界二酸化炭素は,環境負荷の小さい21世紀の溶媒である.

内径0.8 cm,長さ100 cmのステンレス鋼製カラムを40℃に保ち,圧力10,12,15,18 MPaにおいて置換クロマトグラフィーを行った.溶液相側に7Liが,樹脂相に6Liが濃縮される結果となった.濃縮係数は15 MPaにおいて小さくなったが,その他の圧力では誤差の範囲で一致した(図3).濃縮係数として0.002〜0.012の値を得た.

超臨界流体Li同位体分離実験装置
図2 超臨界流体Li同位体分離実験装置.

実験圧力と濃縮係数の関係
図3 実験圧力と濃縮係数の関係.

世界で初めて,超臨界二酸化炭素を媒体とした置換クロマトグラフィーに成功し,環境負荷の小さい同位体分離法を開発した.

【発表論文】
  1. "Recovery of Alkali Salt by Supercritical Fluid Leaching Method using Carbon Dioxide," T. Watanabe, S. Tsushima, I. Yamamoto, O. Tomioka, Y. Meguro, M. Nakashima, R. Wada, Y. Nagase and R. Fukuzato, Proc. 2nd International Symposium on Supercritical Fluid Technology for Energy and Environment Application, 363-366 (2004).
  2. "Use of supercritical carbon dioxide for chromatographic separation of lithium isotopes," Y. Enokida, T. Watanabe and I. Yamamoto, Proc. 8th Workshop on Separation Phenomena in Liquids and Gases (CD-ROM), 1-11 (2004).

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1.3 環境学や歴史学への応用を考えた炭素同位体濃縮技術の確立


年代測定等で重要な14Cは,現代炭素の濃度でも1.2×10-12と非常に少なく,5730年の半減期を有するため,従来の14C年代測定法では6万年以上昔にさかのぼった測定ができない.しかし,試料中の14C同位体比を,確たる分離係数が得られる同位体分離法により濃縮すれば,適用年代域を拡大でき,環境学や歴史学上,大きな意義がある. 小規模で高濃縮が可能であり,本研究室で実験及び解析に実績がある熱拡散法により炭素同位体分離を試みた.

一酸化炭素を試料ガスとし,熱線半径0.075 mm,冷壁半径3.5 mm,長さ195 cmのガラス製カラムを用いて,圧力0.1 MPa,冷壁温度を248 Kに保ち,熱線温度を変化させて全還流運転で濃縮性能を測定した.

理論予測と同じく,分離係数は熱線温度とともに上昇し,888 Kでは全分離係数2.00を得た(図5).776 Kでは±2 %の偏差で再現性を確認した.実験値と計算値は大きく異なるが,これはガラス管の湾曲が原因と考えられた.しかし,高い再現性を得たことで,年代測定用試料の濃縮に関して本手法が適用可能であることを示した.

熱拡散法による炭素同位体濃縮実験装置
図4 熱拡散法による炭素同位体濃縮実験装置.

全分離係数の実験値と計算値の比較
図5 全分離係数の実験値と計算値の比較.

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1.4 マイクロエマルションを利用した疎水性白金触媒の創製


マイクロエマルション化技術および超臨界二酸化炭素を利用して,水素同位体分離用水-水素化学交換法に用いる疎水性白金触媒を開発した.

ステンレス鋼製のDixon gauze ringの表面に百nm程度の凸凹構造をもつ有機シリコン薄膜を形成したものを担体とし,W/CO2マイクロエマルション及び超臨界二酸化炭素を用いて白金前駆体と還元剤を圧入し,反応させて疎水性白金触媒を作製することに成功した.本触媒は,従来品に比べ,非可燃性,圧力損失が小さいなどの特長を有する.

触媒の作製手順
図6 触媒の作製手順.

作製した触媒の活性を,重水素付加水素ガスと水蒸気間の同位体交換反応を通して測定した.結果を図7に示す.触媒活性は時間と共に低下したものの,湿潤条件下においても活性を持続することができ,水-水素化学交換法に適用可能な新規触媒を開発することに成功した.

触媒活性の時間変化
図7 触媒活性の時間変化.

【発表論文】
  1. N. Sakuma, K. Sawada, M. Tone, Y. Enokida and I. Yamamoto, "Synthesis of silver nanoparticles in a water in supercritical carbon dioxide microemulsion," Proc. 2nd International Symposium on Supercritical Fluid Technology for Energy and Environment Application, 319-322 (2004).
  2. R. Shimizu, A. Nibe, K. Sawada, Y. Enokida, I. Yamamoto, "Isotopic exchange reaction between hydrogen and deuterium by a platinum catalyst synthesized in water-in-CO2 microemulsion," International Symposium on Isotope Science and Engineering from Basics to Applications, (2005) Nagoya, 52.
  3. Y. Enokida, R. Shimizu, A. Nibe, K. Sawada, I. Yamamoto, "Platinum catalyst synthesis on superhydrophobic surface for hydrogen isotope separation using water-in-supercritical carbone dioxide microemulsion," The 4th International Symposium on Supercritical Fluid Tachnology for Energy, Environment and Electronics Applications, (2005) Taipei, OP-24.
  4. R. Shimizu, A. Nibe, K. Sawada, Y. Enokida, I. Yamamoto, "Preparation of hydrophobic platinum catalyst in water-in-CO2 microemulsion for chemical exchange reaction between hydrogen and water," 10th European Meeting on Supercritical Fluids, (2005) Colmar, Mc2.
  5. R. Shimizu, A. Nibe, K. Sawada, Y. Enokida and I. Yamamoto, "Preparation of hydrophobic platinum catalysts using a water-in-CO2 microemulsion", J. Supercrit. Fluids (submitted).

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2.同位体創製に関する研究

2.1 新しい同位体の創製


本研究では,主に核分裂を用いて新たな中性子過剰な不安定同位体を創製し,その壊変特性を明らかにすることを目的としている.京都大学研究用原子炉(KUR)及び原子力研究開発機構タンデム加速器に付置したオンライン同位体分離装置(ISOL)を用いて235U(n, f)及び238U(p, f)反応による核分裂生成物から新同位体を含む不安定同位体を創製・分離している.

KUR-ISOL

図8 KUR-ISOL(Isotope Separator On-Line)の概念図.235UF4(50 mg)ターゲットを中性子束3×1012 n/cm2sで照射する.表面電離型イオン源を備え希土類がイオン化・分離できる.

質量数160近傍の中性子過剰希土類同位体領域の核図表

図9 質量数160近傍の中性子過剰希土類同位体領域の核図表.赤く塗られたのは創製した同位体.黒丸は全吸収スペクトルで崩壊エネルギーを測定した同位体.

Euは核分裂収率が小さくイオン化が難しいため,従来,創製が難しい同位体であった.本研究では,UC2の厚いターゲットを用い核分裂生成物をターゲット内より蒸発させイオン化する熱イオン源を開発してEuの新同位体を創製することに成功した.

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2.2 崩壊エネルギーの測定と半減期の決定


β安定線から離れている新同位体は,半減期が数秒以下と短く生成量も極めて少ないものがほとんどで,壊変特性の測定が難しい.特に,崩壊エネルギーQβの測定にはより多くの収量が必要であり,新同位体の多くは半減期が報告されるのに留まり,Qβの実験値は少ない. 本研究では,高性能の全吸収型BGO検出器及びHPGe検出器を開発し,多くの新同位体のQβを測定することに成功した.現在,詳細な解析を行っている.

全吸収型BGO検出器
図10 全吸収型BGO検出器.2個の大型BGO検出器(12 cmφ×10 cm)を向かい合わせ,中心に放射線源を配置する.β線及びγ線に対して高い検出効率を持つ.



全吸収型HPGe検出器
図11 全吸収型HPGe検出器.大型のGe結晶(8 cmφ×9 cm)の中心部に貫通孔を持つ特別性の真同軸型Ge検出器と,それを取り囲む同時・反同時計数用のBGOシンチレーション検出器から構成される.大きな立体角で測定可能であり,β線に対しては100%に近い効率を持つ.

質量数162から得られた全吸収スペクトル
図12 質量数162から得られた全吸収スペクトル.

質量数163から得られた全吸収スペクトル
図13 質量数163から得られた全吸収スペクトル.

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2.3 医療用放射性同位体製造法の検討


安定同位体を主に放射線で照射することで得られる放射性同位体は,基礎科学・医学・科学技術など様々な分野で有効に利用されている.医療用放射線源の場合,甲状腺がん治療として131I,がん治療のための密封小線源として198Au, 192Ir, 137Cs, 60Co,非密封線源として90Y等が用いられている. 以上で述べた放射性同位体の製造には,照射用原子炉やサイクロトロンが一般的に用いられている.放射性同位体の製造法として両者を比較すると,照射用原子炉では1012から1014 個/cm2s のオーダーの安定かつ大きな中性子束を得ることができ,サイクロトロンを用いた場合に比べて一般に安価に製造することができる.そこで本研究では,放射性同位体の製造法として,特殊な照射用原子炉ではなく,発電用に広く使用されている加圧水型原子炉を活用する方法について検討した.対象核種は,転移性骨腫瘍の疼痛緩和剤としての利用が期待されている177Lu,磁気共鳴画像診断法に用いる造影剤としての利用が期待されている153Gdである. 検討の結果,天然組成のHf, Euを用いて,177Lu, 153Gdの製造が可能であることが分かった.さらにHf, EuはPWRの反応度制御材(可燃性毒物)としても利用可能であり,PWRの可燃性毒物と医療用放射性同位体元素の製造が両立する可能性も示すことができた.

PWR用17x17燃料集合体

図14 PWR用17x17燃料集合体.本研究では,集合体中心の計装用案内管もしくは制御棒案内管内で照射を行うことで医療用放射性同位体を製造可能であるかどうか評価した.

天然組成Hfの照射によるLu-177の生成量    天然組成Euの照射によるGd-153の生成量

図15 天然組成Hfの照射による177Luの生成量(左)および天然組成Euの照射による153Gdの生成量(右).いずれについても,PWRを用いて生成が可能であることを確認した.なお,HfおよびEuは反応度制御用の可燃性毒物としても利用可能であり,原子炉の反応度制御と医療用同位体生成を兼ねることが出来る可能性がある.

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Copyright: 2003-2007, Nagoya University