21世紀COEプログラム同位体が拓く未来−同位体科学の基盤から応用まで−
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基盤研究分野 同位体計測部門


1.レーザー分光法に基づく同位体分析法の開発

1.1 共鳴イオン化質量分析法(RIMS)の高度化―ドップラー速度選択式RIMS(DS-RIMS)の開発―

1.2 RIMSの応用―Sr同位体比分析に基づく農作物の産地判別―

1.3 連続発振レーザーキャビティリングダウン吸収分光法(CW-CRDS)に基づく同位体計測手法の開発


2.分離・濃縮法を併用するICP-MS高感度計測法の開発


3.ステレオ投影型マルチピンホールカメラによる三次元放射線イメージングの研究

 


1.レーザー分光法に基づく同位体分析法の開発

1.1 共鳴イオン化質量分析法(RIMS)の高度化―ドップラー速度選択式RIMS(DS-RIMS)の開発―


各元素はそれぞれ特有のエネルギー準位を有しており,吸収しやすい光の波長はそれぞれ異なる.同位体間でも僅かにその吸収波長は異なる.熱運動している原子の中である速度を有するものは,隣の同位体の吸収波長のレーザー光でも,ドップラー効果により共鳴吸収する.この速度差を利用して同位体分析を行う(図1).

DS-RIMSの原理
図1 ドップラー速度選択式RIMSの原理.

各同位体を弁別して検出することに成功し,本方式の原理を実証した(図2).

DS-RIMSスペクトル
図2 DS-RIMSにより得られた質量スペクトル.

なお,本成果は,International Conference on Laser Probing−LAP 2004 (Argonne, USA, 2004)においてYoung Scientist Award (Best Poster)を受賞した.

【発表論文】
  1. Higuchi Y, Watanabe K, Kawarabayashi J, Iguchi T , "Development of trace isotope analysis using resonance ionization mass Spectrometry based on isotope selection with Doppler shift of laser ablated atoms", J. Nucl. Sci. Technol. 43 (2006) 334-338.
  2. Y. Higuchi, K. Watanabe, J. Kawarabayashi,, T. Iguchi, "Trace Isotope Analysis Using Resonance Ionization Mass Spectrometry Based on Isotope Selection with Doppler Shift of Laser Ablated Atoms", KEK Proc. 2005-12 (2005) 170-176.

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1.2 RIMSの応用―Sr同位体比分析に基づく農作物の産地判別―


土壌中の水溶性Srの同位体比は,その土地の地質年代を反映しており,土地毎で異なる値をとる.これを利用し,農作物中のSr同位体比を測定することで産地を同定する.従来,ICP-MS等が用いられていたが,前処理等に手間と時間を費やしていた.本研究では,レーザーアブレーション支援RIMS(LA−RIMS)により,前処理なく農作物中Sr同位体分析を行う手法の開発を進めている.

微量に含まれる(サブppm)農作物中Srを直接LA-RIMSで検出することに成功した(図3)ものの,精度は現状では不十分であった.更なる検出効率向上により改善されることが期待される.

玄米のLA-RIMSスペクトル
図3 玄米試料より得られたLA-RIMSスペクトル.

本研究は,若手融合研究ユニットの「古代交易ネットワーク解明を目指した骨中Sr同位体分析法の開発」に発展!

【発表論文】

  1. Watanabe K, Higuchi Y, Kawarabayashi J, Iguchi T , "Development of the isotope analysis technique for inorganic trace elements using laser ablation assisted resonance ionization mass spectrometry (LA-RIMS)", J. Nucl. Sci. Technol. 43 (2006) 325-329.

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1.3 連続発振レーザーキャビティリングダウン吸収分光法(CW-CRDS)に基づく同位体計測手法の開発


キャビティーリングダウン吸収分光法(CRDS)とは,超長光路吸収分光法のひとつであり,非常に高い感度を有する.本手法は,光共振器(2枚の鏡で囲まれた空洞)内に蓄積されたレーザー光の強度が,その中で多重反射および内在する物質による吸収により,時間に対し指数関数的に減衰することを利用し,この減衰率より,内在する物質の濃度を測定するものである.通常,光源にはパルスレーザーが用いられるが,本研究では,同位体分析を行うために,狭帯域のCW半導体レーザーを利用したCRDS(CW-CRDS)の開発を行っている.本手法では,共振器長を共振条件から非共振条件へすばやく変化させることで,蓄積光の指数関数的減衰を引き起こす.これにより,CWレーザーでもCRDSを行うことが可能となる(図4).

本方式により各同位体分子種を弁別して検出することに成功した(図5)が,精度は不十分であった(原理実証と問題点の抽出).

CW-CRDSの原理
図4 CW-CRD分光の原理図.

CO2のCW-CRDSスペクトル
図5 CO2の吸収スペクトル.

本研究は,若手融合研究ユニットの「レーザー分光によるCO2炭素同位体計測法を用いた森林内炭素循環研究」に発展!

【発表論文】
  1. Tomita H, Watanabe K, Takiguchi Y, Kawarabayashi J, Iguchi T, "Rapid-swept CW cavity ring-down laser spectroscopy for carbon isotope analysis", J. Nucl. Sci. Technol. 43 (2006) 311-315.
  2. H. Tomita, Y. Takiguchi, K. Watanabe, J. Kawarabayashi, T. Iguchi , "Radioactive Gas Monitoring Using Cavity Ring-down Laser Spectroscopy with CW Infrared Diode Laser" J. Radiation Protection Bulletin., Proc. ISORD-3 (2005) 179-182.
  3. 瀧口優, 富田英生, 渡辺賢一, 河原林順, 井口哲夫, 「高速走査型キャビティーリングダウン吸収分光法を用いた炭素同位体測定法の研究」, 放射線 32 (2006) 134-139.

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2.分離・濃縮法を併用するICP-MS高感度計測法の開発


ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)は,ppt (10-12 g/ml)〜sub-pptレベルでの高感度・多元素同時分析が可能な分析法として,現在,広く普及している.本研究では,ICP-MSで邪魔になる主成分の分離と微量元素の濃縮を高効率,かつハイスループットで行えるシステムの開発を目指し,シリンジフィルターとキレート樹脂からなるキレート樹脂充填ミニカラムを開発した(図6).

本研究で開発したキレート樹脂充填ミニカラムの利用により,地下水や河川水,湖水,海水などの天然水に含まれる微量元素の分析が可能になった.実際に分析した例を図7に示す.

キレート樹脂充填ミニカラム

a) prefilter tube (DISMIC-25HP)
b) prefilter tube (Millex-LH)
c) Chelex 100 resin
d) filter (pore size 0.45 mm)

図6 キレート樹脂充填ミニカラム.

水中Gd濃度分布
図7 名古屋市近郊河川水及び沿岸海水中Gdの濃度分布.
【発表論文】
  1. H. Haraguchi, Y. Zhu, R. Hattori, A. Itoh, and T. Umemura, "Multielement Analysis of Commercial Mineral Waters by Chelating Resin Preconcentration and ICP-MS," Biomed. Res. Trace Elements 15 (2004) 355-357.
  2. A. Itoh, Y. Zhu, and H. Haraguchi, "Distributions of Major-to-Ultratrace Elements among the Particulate and Dissolved Fractions in Natural Water as Studied by ICP-AES and ICP-MS after Sequential Fractionation," Anal. Sci. 20 (2004) 29-36.
  3. Y. Zhu, R. Hattori, E. Fujimori, T. Umemura, and H. Haraguchi, "Multielement Determination of Trace Metals in River Water Certified Reference Material (JSAC0301-1) by Micro-mist ICP-MS after 100-fold Preconcentration with a Chelating Resin-Packed Minicolumn," Anal. Sci. 21 (2005) 199-203.

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3.ステレオ投影型マルチピンホールカメラによる三次元放射線イメージングの研究


本研究では,生体内放射性同位元素トレーサのダイナミックイメージングを目指し,複眼的機能を有するマルチピンホールコリメータと高空間分解能X線カメラであるフラットパネル検出器(FPD)を組み合わせたガンマカメラ(図8)を提案している.

3次元イメージングの原理
図8 3次元イメージングの原理.

プロトタイプカメラにより,実際に3次元画像の取得に成功した(図9).高感度FPDを利用すれば,1コマ当たり10秒程度で画像を取得可能である.

画像再構成
図9 実際の線源分布と画像再構成の結果.

【発表論文】
  1. Takemoto H, Watanabe K, Kawarabayashi J, Iguchi T, Uritani A, "Development of dynamic three-dimensional multi-pinhole gamma camera", J. Nucl. Sci. Technol. 43 (2006) 344-347.
  2. 竹元久人, 渡辺賢一, 河原林順, 井口哲夫, 「マルチピンホールガンマカメラによる3次元ダイナミックイメージング技術の開発」, 放射線 32 (2006) 118-123.

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