21世紀COEプログラム同位体が拓く未来−同位体科学の基盤から応用まで−
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基盤研究分野 同位体材料部門


1.同位体御材料の創製とその物性に関する研究

1.1 イオンビーム蒸着法による同位体制御材料の創製

1.2 サブピコ秒パルスレーザーを用いた薄膜熱拡散率測定装置の開発

1.3 熱物性測定装置の微少試料測定のための改良


2.機能材料の物性における同位体効果とその応用

2.1 酸化物プロトン伝導体における水素-重水素置換反応

2.2 酸化物プロトン伝導体中の水素の存在位置の解明


3.同位体イオン注入法を利用した機能性材料の開発

3.1 同位体イオン注入法を利用した紫外光領域発光材料の開発

3.2 窒素同位体イオンと薄膜・基板界面反応及び窒素同位体薄膜成長


4.固体中にイオン注入した水素同位体の挙動とその応用―低角度入射電子顕微鏡法(GIEM)による固体表面ブリスター形成メカニズム解明―

 


1.同位体御材料の創製とその物性に関する研究

1.1 イオンビーム蒸着法による同位体制御材料の創製


質量分離型低エネルギーイオンビーム蒸着装置(図1)を用いて,同位体の組成や配列を制御した単結晶の作製を進めている.

IBD
図1 質量分離型低エネルギーイオンビーム蒸着装置の概要.

これまで,56Fe, 28Si, 74Ge等の単結晶の作製に成功している.中でも74Ge単結晶は,電子回折(図2)やラザフォード後方散乱−イオンチャネリング法で分析した結果,欠陥の少ない良質な単結晶であることがわかった.

74Ge(100) RHEED and LEED

図2 Ge(100)基板上にイオンビーム蒸着法で作製した74Ge薄膜の電子回折像(左:反射高速電子回折,右:低速電子回折).74Geがホモエピタキシャル成長し,Ge(100)2×1再構成表面を形成したことを示している.

【発表論文】
  1. Takahiro Asai, Masanori Takeuchi, Akihiro Urano, Yasushi Kobayashi, Yuuichi Fukuda, Junji Yuhara, Takanori Nagasaki, Tsuneo Matsui, "Characterization of ion beam deposited 107Ag thin films on Si(111) surface by means of Rutherford backscattering spectroscopy and reflection high energy electron diffraction," J. Nucl. Sci. Technol. 43 (2006) 386-390.

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1.2 サブピコ秒パルスレーザーを用いた薄膜熱拡散率測定装置の開発


同位体制御薄膜の熱拡散率を測定する目的で,サブピコ秒パルスレーザーを用いた薄膜熱拡散率測定装置(図3)の開発を進めている.試料オモテ面をサブピコ秒パルス光で加熱した際の試料ウラ面の温度変化から,熱拡散率を求めようというものである.本装置の特長は,温度変化を高い時間分解能(<1 ps)で比較的長い時間(>10 ns)測定できる点である.

サブピコ秒レーザーフラッシュ法薄膜熱拡散率測定装置

図3 サブピコ秒レーザーフラッシュ法薄膜熱拡散率測定装置の概要.図中のグラフは,Mo薄膜(厚さ200 nm,マグネトロンスパッタ)をパルス加熱した際のウラ側表面温度の時間変化である.黒線が得られたシグナル,赤線が理論曲線であり,ノイズが大きいものの理論曲線に近いシグナルが得られていることがわかる.

【発表論文】
  1. T. Nagasaki, H. Ohno, Y. Arita, T. Matsui, "Applicability of subpicosecond pulse lasers to determining thermal diffusivity of metals," J. Phys. Chem. Solids 66 (2005) 560-564.

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1.3 熱物性測定装置の微少試料測定のための改良


比熱容量などの熱物性を高温まで直接測定できる装置の開発を行っている。貴重で微少な同位体試料を測定するために1.5 mm×1.4 mm×10 mmと、これまでに比べ約1/90の大きさでも測定できるよう改良を進めている。

新旧DHPC用試料
図4 試料写真(上:従来の試料,下:測定したい試料).

【発表論文】
  1. Arita Y, Suzuki K, Matsui T, "Development of High Temperature Heat Capacity Measurementn by Direct Heating Pulse Calorimetry", J. Phys. Chem. Solids 66 (2005) 231-234

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2.機能材料の物性における同位体効果とその応用

2.1 酸化物プロトン伝導体における水素-重水素置換反応


燃料電池の材料としても期待されているプロトン伝導体であるペロブスカイト型酸化物セラミックス(ABO3)において,試料中の重水素は速やかに軽水素に置き換わることが発見された.逆に試料中の軽水素は重水素には置き換わらない.

試料中の水素同位体分布

図5 ラザフォード後方散乱で調べた試料中の水素同位体分布.重水素(D)を打ち込んだ試料(青色)を空気中に置いておくと水蒸気と反応して軽水素(H)に置き換わってしまう(赤色).

【発表論文】
  1. Morita K, Tsuchiya B, Nagata S, Katahira K, Yoshino M, Arita Y, Ishijima T, Sugai H, "Temperature dependence of the D-H replacement rates in D-implanted oxide ceramics exposed to H2O vapor", Nucl. Inst. Meth. B 258 (2007) 282-286.

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2.2 酸化物プロトン伝導体中の水素の存在位置の解明


酸化物プロトン伝導体中のプロトン拡散機構を理解するためには,結晶中でのプロトンの占有位置や拡散経路を明らかにすることが必要である.一方,軽元素を含む物質の結晶構造を調べるのに適した手法として,中性子回折がある.ただし,軽水素は非常に大きな非干渉性散乱断面積を持つため,水素を含む物質の中性子回折では,軽水素をその同位体である重水素に置換した試料を用いるのが普通である.

本研究では,ペロブスカイト型プロトン伝導性酸化物BaSn0.5In0.5O2.75に重水(D2O)を溶解した試料を作製し,77-473 Kで粉末中性子回折実験を行った.結果をRietveld法および最大エントロピー法で解析し,水素原子が立方晶ペロブスカイト構造(空間群Pm3m)の12hサイトまたはその近傍に存在することを明らかにした(図6).

※本研究は,日本原子力研究開発機構との共同研究である.

原子核密度分布77K

図6 最大エントロピー法によって求めた,77 KにおけるBaSn0.5In0.5O2.75中の原子核(中性子散乱長)密度分布; 左:乾燥試料,右:重水(D2O)溶解試料.

【発表論文】
  1. T. Ito, T. Nagasaki, K. Iwasaki, M. Yoshino, T. Matsui, "Water uptake and infrared absorption in SrZr0.95M0.05O3-α (M = Ga, Sc, Y and Nd)," J. Therm. Anal. Calorim. 81 (2005) 545-548.
  2. Tsuyoshi Ito, Takanori Nagasaki, Kouta Iwasaki, Masahito Yohino, Tsuneo Matsui, Naoki Igawa, Yoshinobu Ishii, "The determination of deuteron site in SrZr0.95Sc0.05O3-α by neutron powder diffraction," Solid State Ionics 177 (2006) 2353-2356.
  3. Tsuyoshi Ito, Takanori Nagasaki, Kouta Iwasaki, Masahito Yoshino, Tsuneo Matsui, Naoki Igawa, Yoshinobu Ishii, "Location of deuterium atoms in BaSn0.5In0.5O2.75+α by neutron powder diffraction at 10 K," Solid State Ionics 178 (2007) 13-17.
  4. Tsuyoshi Ito, Takanori Nagasaki, Kouta Iwasaki, Masahito Yoshino, Tsuneo Matsui, Hiroshi Fukazawa, Naoki Igawa, Yoshinobu Ishii, "Location of deuterium atoms in BaSn0.5In0.5O2.75+α at 77-473 K by neutron powder diffraction," Solid State Ionics 178 (2007) 607-613.

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3.同位体イオン注入法を利用した機能性材料の開発

3.1 同位体イオン注入法を利用した紫外光領域発光材料の開発


シリカガラスにGe+イオンを注入し,紫外光領域発光サイト(3.1 eV付近の発光)を発現させる.光学特性を制御するうえで重要な要素は,注入原子の固体材料内での分散・凝集性である.注入原子の分散・凝集性は,注入されるイオンの量だけでなく,注入原子の周りに形成される欠陥の種類や量によって著しく変化する.同位体元素を用いて生成欠陥密度を緻密に制御する.

シリカガラスの発光
図7 シリカガラスへのGeイオン注入による紫外光領域発光サイトの生成.

Ge-EXAFS
図8 Geを注入したシリカガラスのEXAFS.

表1 EXAFS解析結果

  配位数 距離(Å) Δσ
Ge-O 1.9 1.76 0.09
Ge-Ge 1.5 2.47 0.0

3.1 eVの発光サイト生成に成功した.この時,注入されたGe原子は2核或いは3核の小さなクラスターを形成していることがEXAFS解析から明らかとなった.

【発表論文】
  1. Yoshida T., Muto S., Tanabe T., "Measurement of soft X-ray excited optical luminescence of a silica glass," API conference proceedings (XAFS13) 882 (2007) 572-574.
  2. Watanabe M., Yoshida T., Tanabe T., Muto S. Inoue A. and Nagata S., "Observation of defect formation process in silica glasses under ion irradiation," Nucl. Instr. and Meth. B 250 (2006) 174-177.
  3. Yoshida T., Tanabe T. Watanabe M., Takahara S. and Mizukami S., "Study of damaging process in silica by in-situ hyrogen-induced luminescence measurements," J. Nucl. Mater. 329-333 (2004) 982-987.

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3.2 窒素同位体イオンと薄膜・基板界面反応及び窒素同位体薄膜成長


SiO2ガラス基板上のSi3N4薄膜及びAl2O3単結晶(R面カット)基板上のAlN薄膜試料を用い、注入Nイオンと基板界面との反応即ち非熱力学的過程の成否を調べる.非熱力学的過程を利用して,従来の熱力学過程と異なる機能創成への展開,同位体薄膜作成を検討する.

RFマグネトロンスパッタ法を用い,N2(自然同位体比99.63 %14N)ガス中にて,窒化物薄膜を作成した.X線回折(XRD)を行い,Si3N4薄膜は非晶質,AlN薄膜は(110)回折ピークを示し,a-軸配向をもつ多結晶(ウルツ鉱型六方晶)であることがわかった.14N及び15N (90%)イオンを室温にて照射した.薄膜の厚さは200 nm程度であり,100 keV Nイオンの平均飛程(約180 nm)に近い.

14Nイオンを1.5x1017 cm-2注入した試料の1.8 MeV Heイオンを用いたラザフォード後方散乱分析(RBS)の結果を図8に示す.Nイオン注入前後において薄膜は化学量論比に近い組成を示し,膜厚が約20 nm増加した.15Nイオンを注入した場合,1.2 MeV d イオンを用いた核反応分析(NRA)の結果,15Nが薄膜・基板界面付近に分布していることがわかった.また,光吸収スペクトルにおいて薄膜・基板の存在に起因する干渉振動を観測し,上述の値と同程度の膜厚増加を得た.以上の結果,薄膜・基板界面において,注入Nイオンが基板と反応していること,15N同位体イオンを注入した場合,薄膜・基板界面付近に同位体薄膜(Si315N4,Al15N)が成長していることを明らかにした.

Nイオン注入前後のAlNのRBS
図9 100 keV 14N-イオン注入(1.5x1017 cm-2)前後のR-Al2O3基板上のAlN薄膜のラザフォード後方散乱スペクトル.Al(surf.),N(surf.)は表面に存在するAl,N から散乱されるHeのエネルギーを,N(int.)はAlN薄膜・Al2O3基板界面から散乱されるHeのエネルギーを示す.

Nイオン注入下の薄膜成長

図10 15N イオン注入下のAl15NまたはSi315N4薄膜成長の概念図 .

【発表論文】
  1. N. Matsunami, T. Murase, M. Tazawa, et al.: Analysis of N isotope depth profiles in search for reaction of implanted nitrogen with substrate near Si3N4-nitride-film and SiO2-glass- substrate interface, Nucl. Instr. Meth. B 249 (2006) 185-188.
  2. N. Shinde, N. Matsunami, O. Fukuoka et al: Reaction of implanted N isotope with SiO2 near Si3N4-film and SiO2-substrate interface, J. Nucl. Sci. Technol. 43 (2006) 382-385.
  3. N. Matsunami, T. Shimura, M. Tazawa et al.: Modifications of AlN thin films by ions, Nucl. Instr. Meth. B 257 (2007) 433-437.

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4.固体中にイオン注入した水素同位体の挙動とその応用―低角度入射電子顕微鏡法(GIEM)による固体表面ブリスター形成メカニズム解明―


表面ブリスター:核変換生成物や高エネルギーガスイオンの照射を受ける原子炉および核融合炉材料の表面に火膨れ状の組織が形成され、材料劣化の観点からも重大な問題である。我々は表面すれすれに電子線を入射して凹凸物の形状と内部構造を非破壊で観察する低角度入射電子顕微鏡法(GIEM)を開発した。更に分子動力学法、有限要素法などの計算機シミュレーションを併用して、水素同位体およびヘリウムによる軽元素半導体材料およびタングステンのブリスター形成メカニズムを解明した。

タングステンブリスターのGIEM像
図11 H+(左)及びD+(右)照射によるタングステンブリスターのGIEM像.照射温度:室温,照射量:1x1024 m-2

有限要素法によるブリスターの解析
図12 有限要素法によって得られた軽水素によるブリスターの弾性歪み(左)及び塑性変形歪み(右)の分布.

本研究によってブリスター壁の構造,内部ガス圧,蓄積ガスの量の定量的な見積もりが可能となった.また更に延性を持たない硬い材料が巨大な塑性変形を引き起こす新しいメカニズムを提案した.

【発表論文】
  1. S. Nakano, S. Muto and T. Tanabe, "Irradiation-induced hardening/softening in SiO2 studied with instrumented indentation", Mater. Sci. Eng. A 400-401 (2005) 382-385.
  2. S. Muto and N. Enomoto, "Substructures of gas-ion-irradiation induced surface blisters in Si studied with cross-sectional transmission electron microscopy", Mater. Trans. 46(10) (2005) 2117-2124.
  3. S. Nakano, S. Muto and T. Tanabe, "Change in Mechanical Properties of Ion-Irradiated Ceramics Studied by Nanoindentaion Method", Mater. Trans. 47 (2006) 112-121.

    他,国際会議口頭発表,学会誌解説記事など多数.

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Copyright: 2003-2007, Nagoya University