21世紀COEプログラム同位体が拓く未来−同位体科学の基盤から応用まで−
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若手融合研究ユニット


1.レーザーによるCO2炭素同位体計測法を用いた森林内炭素循環研究


2.古代交易ネットワーク解明を目指した骨中Sr同位体分析法の開発


3.生体内に存在する金属元素と同位体水分子との相互作用に関する研究


4.イメージングプレートを用いる90Y悪性リンパ腫治療経過観察用画像取得システムの開発

 


1.レーザーによるCO2炭素同位体計測法を用いた森林内炭素循環研究


環境計測のニーズ:同位体比解析は環境中の物質の動態の定量的な解析の有効な手段である.本COEの環境・生命部門では森林中の炭素循環(二酸化炭素と有機物の間で炭素が移動する)の解明に,図1のように炭素の移動にともない変化する炭素の同位体比(13C/12C)を使用している. 煩雑な前処理が不要で迅速な測定が可能で,装置の移設が容易で野外でのその場測定が可能な同位体比計測が実現すれば,高頻度高精度の観測により空間的に一様でなく時間的にも定常でない自然環境をより的確,詳細に解析・議論することが可能になる.

森林内炭素循環

図1 森林内の炭素循環の概念図.赤い文字と矢印で表した過程は炭素同位体比(13C/12C)の大きな減少を生ずる.

同位体計測のシーズ :本COEの同位体計測部門で は狭帯域のCW半導体レーザーを利用するキャビティーリングダウン吸収分光法(CW-CRDS)の開発を進め,異なる同位体から成る分子の判別・定量が可能であり,非常に高い感度を有することを実証した.図2に示す動作原理から比較的単純な機器構成であり,高真空等を要しないため装置の小型化・可搬化が容易であると期待できる.測定対象の気体分子を他の化学種の気体分子との混合気体の状態で計測できるので,簡易な前処理で環境試料の同位体比測定が実現可能と期待できる.

CW-CRD分光の原理図
図2 CW-CRD分光の原理図.

ニーズ×シーズ融合研究:CW-CRDSによる森林環境中の二酸化炭素の動態の高精度高頻度観測の実現を目標として,以下の開発を行う.

  • 大気中CO2および土壌空気中CO2の安定炭素同位体比(δ13C)解析に十分な測定精度の実現
  • 装置の小型化・可搬化のための改良
  • 実環境試料の測定のための,迅速簡便な前処理方法と装置への試料導入手法の検討

より適切な吸収波長へレーザー光源を変更し,測定精度の悪化要因であることが明らかとなったレーザー光源と光共振器の不整合および高反射率ミラー駆動の不安定性を改良したプロトタイプ機を製作した. 図3に示すように異なるCO2分圧 (=共振器内の量)に対して異なるリングダウン信号が得られ,CO2の検出限界は0.17%と見積もられた.データ取得速度などのシステム最適化を図ることで,森林土壌空気中CO2のδ13C同位体比解析が可能となる 「混合比5%のCO2のδ13C測定精度1‰」を達成できる有望な見通しが得られた.

リングダウン信号
図3 異なるCO2分圧に対するプロトタイプ機のリングダウン信号の測定例.

【発表論文】

  1. H. Tomita, K. Watanabe, Y. Takiguchi, J. Kawarabayashi, T. Iguchi, "Rapid-swept CW cavity ring-down laser spectroscopy for carbon isotope analysis." J. Nucl. Sci. Technol. 43 (4) (2006) 311-315.

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2.古代交易ネットワーク解明を目指した骨中Sr同位体分析法の開発


古代遺跡より出土する化石骨・歯中のストロンチウム(Sr)同位体比から,その人の育った地域および生まれた地域(地質)を推定することが可能である.古代人の骨・歯中のSr同位体比解析を用いた古代交易ネットワークの解明をめざす.

古代交易ネットワークの解明
図4 古代交易ネットワーク解明につながる化石骨中のSr同位体比分析.

本研究では,Sr同位体比分析法として歴史的試料を準非破壊(前処理なく微量試料)で高感度に分析可能なレーザーアブレーション共鳴イオン化質量分析法(LA-RIMS)を適用し,その高精度化,骨試料分析のための手法の確立を行なう.

まず,骨の87Sr/86Sr同位体比が,その動物が生育した土地の地質の87Sr/86Sr同位体比を示すのかどうかの検証(表面電離型質量分析法TIMSによる測定)を行った.

ブラックバス
図5 琵琶湖に生育する「ブラックバスの骨」と琵琶湖の「湖水」のSr同位体比.

イノシシ
図6 足助に生育する「イノシシの骨」と足助の「地質(河川堆積物)」のSr同位体比.

次に,同一骨試料に対するLA-RIMSと誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS),表面電離型質量分析法(TIMS)による分析結果を相互比較することで,LA-RIMSの分析性能の評価を実施した.

愛知県豊田市足助のイノシシの骨を加工・研磨し,LA-RIMSによる87Sr/86Sr測定の基礎実験を行なった結果,TIMSによる同位体比と系統的なずれがあるものの,測定精度0.6%を得た(図7). → 実際の化石骨試料分析に利用可能なシステムが整った.

イノシシ骨試料のLA-RIMS
図7 愛知県豊田市足助で採取したイノシシの骨のLA-RIMSによるSr同位体比測定.

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3.生体内に存在する金属元素と同位体水分子との相互作用に関する研究


ヘモグロビンの硫化における水同位体分子の影響について調べている.

下の写真の試料は,赤血球から抽出したヘモグロビンを軽水(H2O)または重水(D2O)中に展開し,一酸化炭素(各左)と硫化水素ガス(各右) をバブリングしたものである.見て明らかなように,軽水の方は硫化水素により著しく変色している.

ヘモグロビンの硫化
図8

表1は,重水を用いた試料に対して測定したICP-Massの結果である.確かに硫黄原子が極端に増加している.

図9は,重水を用いた試料に対して測定した硫黄K吸収端NEXAFS測定の結果である.上のICP-Massの結果と同様に,硫黄原子の存在が2倍程度に増加していることが分かる.([赤の矢印の長さ]/[青の矢印の長さ]).また,硫化水素をバブリングしたスペクトルに見られる 2472 eV付近のピークは硫黄原子とヘモグロビン中の鉄原子との化学結合を示唆したものであると考えられる.

表1 重水展開試料のICP-Mass分析結果
測定波長(Å) Hh-CO Hh-Sulfur 検出限界
S 1820 536 918 1
Fe 2599 297 271 0.2
Na 5889 83.5 85.2 0.9
Zn 2138 4.50 3.90 0.03

硫黄K吸収端NEXAFS
図9 重水展開試料の硫黄K吸収端NEXAFS.

【発表論文】
  1. Shinya Yagi, Toyokazu Nomoto, Takaki Ashida, Kazuya Miura, Kazuo Soda, Kazue Yamagishi, Noriyasu Hosoya, Ghalif Kutluk, Hirofumi Namatame and Masaki Taniguchi, "XAFS Measurement System for Nano, Bio and Catalytic Materials in Soft X-ray Energy Region", Proceedings of SRI-2006, American Institute of Physics 879 (2006) 1638-1641.
  2. Yagi, S. Matsumura, Y. Soda, K. Hashimoto, E. Taniguchi, M., "Interface Study for Liquid-Solid State Surface by means of S K-edge NEXAFS Method", Surface and Interface Analysis, 36 (2004) 1064-1067.

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4.イメージングプレートを用いる90Y悪性リンパ腫治療経過観察用画像取得システムの開発


★IPシステムの90Yに対する基本性能評価および臨床適用の可能性

Y-90線源の画像化
図10 イメージングプレート(IP)および画像読み取り装置を組み合わせたシステム(IPシステム)を用いて90Y(点線源)から放出されるβ線の画像化に成功した.

★IPシステム画像の散乱線除去を目的とした新たな画像処理方法の構築

PIXON法の効果:I-125甲状腺画像
図11 コリメータなしのIPシステムによって得られた125I甲状腺画像(左)は,PIXON法による画像処理によって散乱線成分が除去され(右),甲状腺ファントムと同様の画像が得られた.

PIXON法の効果:脊椎画像
図12 コリメータおよびIPシステムによって得られた脊柱画像(PIXON法による画像処理後)は,ガンマカメラ像と同程度の画質であった. IPシステムによって得られた90Y画像に対してもPIXON法が有用であると考えられる.

【発表論文】
  1. Shigeki Ito, Takuya Saze, Kunihide Nishizawa, Thyroid 123I imaging system using an imaging plate. Radiation Safety Management, Vol. 4, No. 1, 1-10, 2005.
  2. Shigeki Ito, Takuya Saze, Kunihide Nishizawa, High sensitive 123I thyroid uptake measurement method. Radiation Safety Management, Vol. 3, No. 1, 11-19, 2004.
    日本放射線安全管理学会 [平成17年度最優秀論文賞] 受賞

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